連続ブログ小説 「光への願い」 第10話

2人にだけ、ピーンと張りつめたものがあった。渡と岬では感じ方が違うもので、

渡の顔が固くなっていくのを、岬は一瞬のうちに感じ取ることができた。

また、渡は岬の真剣な顔つきがとてもとても窮屈な感じで,言葉を言いだそうとしても

なかなか声に出なかった。

 

岬「わたる・・・くん」

渡「・・・・・・・・・・岬さん。試験どうだった?」

岬「分かんない。でもね、渡君が応援してくれたから頑張れた。励まされた。やれることはやったよ」

渡「うん・・」

岬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

なぜか2人の会話が続かない。ものの数十秒の間が数十分に感じられるほど2人は緊張しているように見えた。

2人はお互いを見つめあうように正面に立ちつくしていた。

 

その時である、急に渡が岬に近づいたかと思うと人目をはばからず抱きしめた。

岬は何が起こっているのか理解するのに時間はかからなかった。

岬「渡君。どうしたの。放して」

渡は我に返ったかのように岬から離れた。

渡「ごめん。急にこんなことして」

岬「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

渡は真剣な表情で

渡「僕は君を好きなんだ。毎日毎日図書館で君と過ごす時間は幸せだった。

受験というものがお互いにあって、君がそんな気になれないことも分かっている。

でも僕は君が好きなんだ。好きになってしまったんだ」

岬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

岬はとても困惑したような表情をしていた。しかし、何かを考えているかのようにも感じられた。

渡は岬の顔を真正面からじっと見つめていた。

しばらくして、岬がやっとの思いで言葉を出した。

 

岬「わたる君。なんで今なの?私たち別々の大学に行くでしょ。離れ離れになっちゃうよ」

渡「君に言わないということもできた。ただ、どんな答えだろうと君に伝えたかったんだ。僕の気持ち。まだ、試験の結果も出ていないことも理解している。でも君が好きだ」

 

岬「渡君。さっきから私のこと「君って」呼んでる」

渡「ご、ごめん。無意識に言ってしまってごめん」

岬「きみって 悪くないね」 と言い岬は渡にほほ笑みかけた。

 

渡も少しその笑顔を見て、顔の緊張が取れてきた。岬が不意に

岬「渡君。歩こうか、少し」と言い2人は歩き始めた

 

何を話をするわけでもなく2人は歩き始めた。しばらく何もしゃべらない時間が経過したときである。

岬があるお店の前のガラスに並んでいる靴を見て「素敵な靴」といい止まってしまった。

渡は岬のきらきらした女性らしい一面を更に見て、心が浮つく自分を感じていた。

 

渡「あれが欲しいの?」

岬「違うの。欲しいわけじゃないの。そんなに簡単に手に入る値段じゃないし。

欲しいものはじっくりと吟味するの。私」

渡「そうっか・・・・・・・・・」

 

2人の中に会話ができたが、渡の想いに対する答えはないままであった。

しばらく歩くと横並びのまま、前を向き岬が話を始めた。

岬「今日はありがとう。嬉しかったよ。渡君。 少し考えたいの色々と。渡君の行きたい大学は京都だっけ?」

渡「うん」

岬「私が行きたい大学は奈良県。じゃあね」

 

そう言い残し岬は家の方向へ歩いて行った。渡は岬が見えなくなるまで岬を目で追っていた。

渡の中にモヤモヤしたものが残ることになったのは言うまでもない。

 

それから2日後

岬が学校の校門で立って誰かを待っているようだった。それは渡を待っていたのである。

何か嬉しそうな表情で渡を待っていた。

 

渡がホームルームを終え校門を出ようとするとき岬に気づいた。お互いがはっとした感じで少しはにかんだ。

岬が渡へ

岬「一緒に帰ろ。神社行こう。渡君」

渡「うん。僕も君に話したいことがあるんだ」

 

やや強引だが、渡は岬の言うがままに神社へ向かって歩き始めた。

渡の中に期待と不安と混じっていた。岬も実は同じであった。お互いの口からどのようなことが

言われるのか心が先へ先へ歩いているようだった。

 

寒い、寒い12月。

枯葉が道の両端に溜まり、カサカサと風の音が聞こえる水曜日であった。

 

続く

by  natsu