連続ブログ小説 「光への願い」 第18話

渡は春香の声で脳天を突き破る感覚を覚えた。それと同じタイミングで春香がきつく渡の手を握った。

春香「お願い・・・・・・・・・・・・・・・」

 

渡は春香の部屋に歩いて行った。暑い夏の夜であった。

 

 

2週間後岬と渡が会う日であった。

岬「渡君。元気だった?」

渡「・・・・・・・うん、まぁ」

岬「はっきりしなわね。今日はどこに行こうか」

渡「そうだね・・・・・・・・・・・・」

岬「渡君、考えてなかったの」

渡「・・・・・・・・・嵐山の林道を見に行こうか。岬は見たことある?」

岬「ないよー」

渡「じゃあ、決まり」

しかし、渡の表情は冴えないものであった。渡の頭に春香と岬の2人のことでいっぱいで

あったと同時に罪悪感が心を押し潰そうであった。

 

岬「渡君。なんか元気ないよ。どうかした?」

渡「なんでも・・・・・・・・・・・・・・」

その時、同時に渡のメールの着信音が響いた。

 

渡がメールを確認すると春香からであった。

 

~春香メールより~

渡君。この前はありがとう。楽しかったよ。私が伝えた気持ちは本気です。

どんな形であろうと私は渡君のことが好きです。

 

「会ひたくて 逢ひたくて踏む 薄氷」

 

                           メールの中にに俳句が1句書かれていた。

渡はメールを岬に見えないようにして確認をして、すぐに携帯をしまった。

携帯電話を見た渡の表情が変化したことを岬は感じ取った。

同時に岬の中に急に大きな不安が押し寄せてきた。

 

岬はうつむき加減で嵐山までのバスの中を過ごした。

 

林道を歩くまでには多くの人混みであった。手をつないだり、腕を組んだりしたカップルが多く歩いていた。

渡と岬も本来なら周囲と同じ状況であったに違いない。しかし、今日は手もつながず、腕も組んでいない2人。

渡が一歩前を歩き、その後ろに岬が続いた。2人の中に寂しさを感じさせるものがたまらなく

痛く、苦しく、切なく感じさせた。

 

ただただ、悲しみの中に岬はいた。

 

岬が口火を切った。

岬「渡君。勘違いならごめんなさい。もしかして気になる人ができた?」

 

2人の間に一気に隙間ができる音がした。渡は俯き加減でか細い声で、

 

渡「/////////////////////// ごめん        ///////////////////////

 

岬はその場に立ち尽くした。涙が溢れて、溢れて仕方なかった。

竹林の笹が擦れる音と、岬の小さな、小さな泣き声が相重なり、寂しさを更に強調するものであった。

 

そして、2人の夏が終わった。

 

続く

by natsu