渡は春香の声で脳天を突き破る感覚を覚えた。それと同じタイミングで春香がきつく渡の手を握った。
春香「お願い・・・・・・・・・・・・・・・」
渡は春香の部屋に歩いて行った。暑い夏の夜であった。
2週間後岬と渡が会う日であった。
岬「渡君。元気だった?」
渡「・・・・・・・うん、まぁ」
岬「はっきりしなわね。今日はどこに行こうか」
渡「そうだね・・・・・・・・・・・・」
岬「渡君、考えてなかったの」
渡「・・・・・・・・・嵐山の林道を見に行こうか。岬は見たことある?」
岬「ないよー」
渡「じゃあ、決まり」
しかし、渡の表情は冴えないものであった。渡の頭に春香と岬の2人のことでいっぱいで
あったと同時に罪悪感が心を押し潰そうであった。
岬「渡君。なんか元気ないよ。どうかした?」
渡「なんでも・・・・・・・・・・・・・・」
その時、同時に渡のメールの着信音が響いた。
渡がメールを確認すると春香からであった。
~春香メールより~
渡君。この前はありがとう。楽しかったよ。私が伝えた気持ちは本気です。
どんな形であろうと私は渡君のことが好きです。
「会ひたくて 逢ひたくて踏む 薄氷」
メールの中にに俳句が1句書かれていた。
渡はメールを岬に見えないようにして確認をして、すぐに携帯をしまった。
携帯電話を見た渡の表情が変化したことを岬は感じ取った。
同時に岬の中に急に大きな不安が押し寄せてきた。
岬はうつむき加減で嵐山までのバスの中を過ごした。
林道を歩くまでには多くの人混みであった。手をつないだり、腕を組んだりしたカップルが多く歩いていた。
渡と岬も本来なら周囲と同じ状況であったに違いない。しかし、今日は手もつながず、腕も組んでいない2人。
渡が一歩前を歩き、その後ろに岬が続いた。2人の中に寂しさを感じさせるものがたまらなく
痛く、苦しく、切なく感じさせた。
ただただ、悲しみの中に岬はいた。
岬が口火を切った。
岬「渡君。勘違いならごめんなさい。もしかして気になる人ができた?」
2人の間に一気に隙間ができる音がした。渡は俯き加減でか細い声で、
渡「/////////////////////// ごめん ///////////////////////」
岬はその場に立ち尽くした。涙が溢れて、溢れて仕方なかった。
竹林の笹が擦れる音と、岬の小さな、小さな泣き声が相重なり、寂しさを更に強調するものであった。
そして、2人の夏が終わった。
続く
by natsu