連続ブログ小説 「光への願い」 第20話

10月に入り朝、夕が一気に涼しくなってきた。岬はというと写真部の中でファッションや美容に

関する写真を撮影する日々であった。岬の目に映るすべてのものに興味を持てるようになった。

 

そして10月の終わりに2泊3日で実家に戻った。実に3月ぶりの帰省であった。

岬はワクワクする気持ちで、心が高ぶっていた。

両親へ会える安心感と自分自身が見つけた夢を抱えて岐路に着いた。

 

岬「ただいまぁ。」

母「お帰り~」  

台所の奥から母親の声が聞こえた。すぐに分かった。今日もハンバーグだと。

岬「お父さん。ただいま」

父「お帰り。疲れただろ。お風呂に入りなさい」

岬「は~い」

岬がお風呂場に行くと、両親が顔を見合わせ、ホッとした表情をしていた。

 

岬がお風呂から上がると久しぶりに3人並んで夕食を食べた。久しぶりに食べる母の味だった。

岬は食事が美味しくて、美味しくてたまらなかった。

 

母「岬、そんなに焦らくても誰も取りませんよ。奈良ではちゃんと食べてるの?」

岬「だっておなかペコペコなんだもん」と言いつつ、岬は目を真っ赤にしてがむしゃらに食べていた。

 

母親も同じく目を真っ赤にして岬の食事風景を見ていた。

岬は一通り食べ終えると一呼吸して話し始めた。

 

岬「私、何か目標を見つけることができたみたい」

母「なぁに、それは」

岬「お母さん。私が美容の話をしたこと覚えている」

母「なんとなく、覚えているわよ」

 

岬は友達とファッションショーに行ったことを楽しそうに話をした。

そこから自分の気持ちの変化や目標ができてきたことを嬉しそうに話した。

 

両親ともにこやかに黙って話を聞いていた。父親が一言、岬に言った。

父「楽しいのか」

岬「楽しいし、ワクワクするよ」

父「それなら良かった。楽しかったり、ワクワクしないと仕事は続かないものだ。

     でも時には試練もあるけど岬が選んだことをまずは頑張りなさい」

岬「はい、頑張る」

母「それで、美容って言ってもね。どの分野にするの?」

岬「まだ決まってないの。これからじっくり決めるの」

 

そう言って最近岬が撮影した写真を両親へ披露した。どれもこれも美容やファッションに関する写真

ばかりであった。

しかし、岬らしい写真ばかりで、きれいな服や化粧品ばかりではなく、楽しそうな、イキイキした表情を

撮影しているものが多かった。

 

母「岬らしい写真だわね」

岬「よくわかんないけど。イキイキしている人を見ると撮らせてもらっているの。」

 

両親との話は尽きなかった。2泊3日はあっという間に過ぎた。まだまだ時間が足りない感じで、

物足りない感じだが戻る日の朝を迎えた。

 

母「岬、あなたらしさでいいのよ。そうしたら岬、あなたきっと素敵な女性になれるわ」

岬「うん。」

 

簡単な会話を終えると、

母「いつでも帰ってらっしゃい。お母さんいつでもハンバーグ作って待ってるからね」

岬「ありがとう。お母さん、お父さん。行ってきます」

父「行ってらっしゃい。体に気をつけるんだぞ」

母「行ってらっしゃい」

 

母は今日も泣いていた。ただ、3月の別れよりかは寂しさは緩和されていた。

なぜなら、自分の夢や目標ができて岬には遠い場所ではあるが、小さな光が見えていたからだ。

真っ暗ではない、明るい未来を自分で作らなくてはいけないと自覚していた。

 

岬は奈良に戻った。

季節は11月になった。寒さが少しずつ増して落ち葉が少しずつ目立つようになっていた。

その頃、岬に新たな出会いが待っていた。

 

岬がよく通う喫茶店に、同じく通っていた剛だった。カウンターの隣同士に座ったことを

きっかけに話が盛り上がった。剛は奈良の大学に通う2年生。良くこの喫茶店には来ている

ようだが、岬は初めての対面であった。しかし剛は岬を数回喫茶店で見ており、顔は知っていたようだった。

 

岬「剛君。趣味はあるの」

剛「写真だよ」

岬「えっ・・・・・・・・」

剛「どういう反応。」と言いほほ笑みかけた。

岬「私、大学のサークルの写真部なの」

剛「えっ」

岬「剛君も同じ反応した」

そう言い2人は笑っていた。2人は写真についてお互いが撮影してきたものを色々と話をした。

時間はあっという間に夜の20時となり閉店時間を迎えた。

お互い話足りない雰囲気であるのは、お互いが感じ取っていた。

 

剛「家に来て、僕の撮影した写真見ない?」

岬「いいの」

 

岬は何のためらいもなく、今日出会った、剛の家に行くことになった。

剛の住むマンションは3LDKで大きく、きれいで、岬の住むワンルームマンションとは比べ物にならなかった。

 

岬「剛君の実家ってもしかしてお金持ち」

剛「父は会社経営している」

岬は少し心がひるむ自分がいたが、そこを察した剛がすぐに岬へ

剛「父は父、僕は僕、今はすねかじってるけど、いつか自分の足でちゃんと立って親を見返すんだ」

 

剛はやや早口でそう言い放った。

岬の中にほっとする自分自身を感じていた。というより、剛を見直していた。

 

そして、2人が付き合い始めるまでに時間はかからなかった。

岬2回目の恋の始まりであった。

 

続く

By natsu