連続ブログ小説 「光への願い」 第23話

年末が近づいたある日。剛と岬は街へ出た。今日はカメラを手にせず。

久々のデートらしい、デートをするために2人は街へでた。

 

剛「岬、どこに行きたい」

岬「美術館」

 岬の返答は早かった。

剛「何か見たいものがあるの?」

岬「特にはないんだけど、静かに過ごしたいんだ。過ごすというより、日頃見ないものを見て、

自分の中にない感情や感覚を高めたいんだ」

剛「岬、どうした?」

岬「剛君に言ってなかったけど、私ウェディングプランナーになりたいの。そう、目指そうと思って」

剛「ウェディングプランナーかぁ。大変な仕事だよね。」

岬「あの仕事には夢が詰まっているの」

 岬はキラキラした表情で、自信をもってそう答えた。剛はその返答に目を細くして岬を見つめた。

 

岬は嬉しそうな表情で話をしていた。そう話しながら移動していたら美術館に到着した。

美術館の中では、岬と剛は最初は一緒の歩幅で鑑賞していたが、岬と剛は少しずつ離れていき、

剛がだいぶ先を歩いていた。

 

岬はある額縁の前で足が止まった。

大きな額にきれいなウェディングドレスが入っていた。なかなか見ない光景であった。

 

しかし、その衣装は白で、とてもきれいで、繊細で、優雅で、人が着ていないにも関わらず、

衣装が生きているかのような印象を受けた。

岬は目を閉じ、どのような人がこの衣装を着て、どのような式が行われたのか、どのような幸せが

詰まっているのか頭の中で空想を巡らせた。

 

岬はウェディングドレスを見ながら「これだっ」ていう感覚を覚えた。

その時の岬の表情は、宝物を見つけたような眼を見開き、興奮が頭の中で爆発するかのような

イメージであった。

 

相手の幸せを想像し、予想を超え、価値あるものにしていくこと。

それがウェディングプランナーとして必要な気持ちだということを岬は心に刻んだ。

 

剛が遠くから岬を静かに見ていた。

それに気づいた岬は少し早歩きで剛のところまで追いついた。

その時の岬の表情はとても穏やかで、希望に満ちていた。

 

美術館を出て剛は岬に言いづらそうに話を始めた。

剛「岬って。自分を持っているんだね。時に自分がみじめになる」

岬「どうして?」

剛「岬は年齢と精神年齢がかけ離れている。自分の考えが幼すぎるように感じる。

俺は自立しているようで親のすねかじってるし、何言っても親にお金を出してもらっている」

岬「私も一緒だよ」

剛「違うんだ。親への感謝とか、ライバル心とか、見返そうとか。

 目先しか考えれない自分がみじめに感じる。でも、岬は親に感謝し、

 自立した女性になるっていつも話しているし。実際そうだし。

 自分のやりたいこと見つけてキラキラしてるし」

 

岬「剛君・・・・・・・」

剛「俺に少し時間をくれないか」

岬「時間・・・・・・・・・・・・・・」

 

岬と剛は少し離れることになった。岬は自分自身を振り返った。

自分の言動や行動が剛を傷つけてなかったのかと。

 

岬は寂しい表情をしていたが、自分自身の行動や考え方を変えようとはしなかった。

自分自身に迷いはない、岬になっていた。

 

12月28日を迎えた。

岬はお正月を過ごすために実家へ帰省した。いつもと変わらず、いつもの母のハンバーグが迎えてくれた。

岬は家族の温かみと両親への感謝を深く感じていた。

 

そうして新たな年が除夜の鐘とともに迎えた。

家族でそれぞれ新年のあいさつをし、岬は初詣に向かった。

そこは、以前、渡から告白をされ、その返事をした神社であった。岬の中で渡との思い出がよみがえっていた。

 

神社に着くと、大くの参拝者であふれていた。10分ほど行列に並び新年のお参りを終えた。

岬はお参りを終えて階段を下りていると、渡が階段を一人で挙がってきた。

 

岬「渡君」

渡「岬さん。久しぶりだね。新年あけましておめでとう」

岬「おめでとう。渡君。変わってないね。」

渡「・・・・・・う、うん」

渡の返事に間があったことを岬は感じた。

簡単な言葉を交わし2人はその場を別れた。

 

それからしばらくした後、岬の耳に渡と春香が別れていたことが耳に入った。

あの正月にあった時にはすでに別れていたのだった。

あの渡の間の意味が理解できた。

 

正月を終え、岬は奈良に戻った。

そして岬にとって新たな年がはじまった。

 

続く

By  natsu