夏休みも終盤になってきた頃、岬は写真部のみんなと食事に出かけた。
そこには高橋先輩も参加していた。岬の横に座った高橋先輩は岬からすると憧れの
写真部の先輩でもあった。ただあこがれは、写真の技術に関してのみであった。
今日までは。
岬は高橋先輩と話をしていく中で、高橋先輩に吸い込まれていきそうだった。
数日後岬は何かを意識していた。それは高橋先輩を無意識に目で追いかけていた。
岬はハッとした自分に気づいた。
渡がいるにも関わらず、大人びた高橋先輩を意識していたからだ。
岬は自己の無意識を恥じた。
渡はというと映画研究部で日々映画にのめりこんでいた。
そこには春香という新入生も入部していた。春香は小柄で、控えめな感じで透き通るような美しい女性であった。
多くの男子生徒が気になるような女性だった。
春香「渡君。渡君は彼女とかいるの」
渡「・・・・いるよ。少し離れているけど」
春香「興味あるなぁ。その子のこと」
渡「どうして?」
春香「なんとなくかなぁ・・・・・・・・・・・・付き合ってどのくらい」
渡「半年くらいだよ。今は1ヶ月に1回くらいしか会えないけど」
春香「寂しくないの?」
渡「そりゃ。寂しいよ。特に会って別れる際はいつも寂しい」
春香「そうなんだ」
渡「春香さんは?」
春香「私は今は彼氏いないの。」
渡「えっ。春香さんにいないの??」
春香「そうよ。」
渡「信じられないよぉ。世の中の男たちは何をしてるのか」
春香「渡君。立候補してよ」
渡「・・・・・・・・・・・・えっ」
渡の周囲の時間が一瞬止まったが、どうせ冗談をいっているんだろうとその時は流した。
春香「冗談よ。もう」
春香の言い方は冗談に聞こえなかった。全く聞こえなかった。
とても寂しそうに聞こえた。渡が春香を少し意識した瞬間だった。
8月最終の土曜日渡と岬はいつものように、いつもの場所で落ち合った。
そしていうものようにデートをして、夜は渡の部屋で愛し合い、翌日の午後に見送ることを繰り返していた。
少しお互いに慣れのようなものができていた。
お互いの心の中にほんの少しだけ隙間ができていた。
それは高橋先輩と春香が影響しているのはお互いが感じていたが、明確なものではなかった。
夏休みも終わり授業が再開された、ある月曜日のサークル後の出来事。
春香「渡君。今日付き合ってほしいところがあるんだけどいい?」
渡「いいけど、どこ」
春香「秘密だよ・・・・・」
渡「えっ、秘密?」
春香は渡とあるレストランに向かった。それは渡が岬の誕生日をお祝いしたあのレストランであった。
続く
By natsu