連続ブログ小説 「光への願い」 第16話

夏休みも終盤になってきた頃、岬は写真部のみんなと食事に出かけた。

そこには高橋先輩も参加していた。岬の横に座った高橋先輩は岬からすると憧れの

写真部の先輩でもあった。ただあこがれは、写真の技術に関してのみであった。

 

今日までは。

 

岬は高橋先輩と話をしていく中で、高橋先輩に吸い込まれていきそうだった。

 

数日後岬は何かを意識していた。それは高橋先輩を無意識に目で追いかけていた。

岬はハッとした自分に気づいた。

渡がいるにも関わらず、大人びた高橋先輩を意識していたからだ。

岬は自己の無意識を恥じた。

 

渡はというと映画研究部で日々映画にのめりこんでいた。

そこには春香という新入生も入部していた。春香は小柄で、控えめな感じで透き通るような美しい女性であった。

多くの男子生徒が気になるような女性だった。

春香「渡君。渡君は彼女とかいるの」

渡「・・・・いるよ。少し離れているけど」

春香「興味あるなぁ。その子のこと」

渡「どうして?」

春香「なんとなくかなぁ・・・・・・・・・・・・付き合ってどのくらい」

渡「半年くらいだよ。今は1ヶ月に1回くらいしか会えないけど」

春香「寂しくないの?」

渡「そりゃ。寂しいよ。特に会って別れる際はいつも寂しい」

春香「そうなんだ」

渡「春香さんは?」

春香「私は今は彼氏いないの。」

渡「えっ。春香さんにいないの??」

春香「そうよ。」

渡「信じられないよぉ。世の中の男たちは何をしてるのか」

春香「渡君。立候補してよ」

渡「・・・・・・・・・・・・えっ」

渡の周囲の時間が一瞬止まったが、どうせ冗談をいっているんだろうとその時は流した。

春香「冗談よ。もう」

春香の言い方は冗談に聞こえなかった。全く聞こえなかった。

とても寂しそうに聞こえた。渡が春香を少し意識した瞬間だった。

 

8月最終の土曜日渡と岬はいつものように、いつもの場所で落ち合った。

そしていうものようにデートをして、夜は渡の部屋で愛し合い、翌日の午後に見送ることを繰り返していた。

少しお互いに慣れのようなものができていた。

 

お互いの心の中にほんの少しだけ隙間ができていた。

 

それは高橋先輩と春香が影響しているのはお互いが感じていたが、明確なものではなかった。

 

夏休みも終わり授業が再開された、ある月曜日のサークル後の出来事。

春香「渡君。今日付き合ってほしいところがあるんだけどいい?」

渡「いいけど、どこ」

春香「秘密だよ・・・・・」

渡「えっ、秘密?」

春香は渡とあるレストランに向かった。それは渡が岬の誕生日をお祝いしたあのレストランであった。

 

続く

By natsu