季節は夏が終わり、11月になり大学の推薦入試が始まっていた。風が吹くと肌寒い日々であった。岬の周囲では受験モードに入り、友人たちもぴりピリした感じが感じられた。
岬はというと、12月の推薦入試に向けて日々勉強を重ねていた。しかし、まだ、将来の夢やなりたい職業は決まっていない状況であった。
岬は学校が終わると毎日図書館に通っていた。今日も同じように図書館で勉強を始めると岬の横に座ろうとする男子生徒がいた。渡であった。
渡は岬の隣のクラスの男子生徒で、顔は何となく知っているのみであった。
渡「横座っていい?」
岬「別にいいよ。」
渡「君隣のクラスの子だよね。名前は」
岬「そうだよ。岬って言います」
渡「よろしくね」
岬「よろしくね。」
渡「よく図書館で見かけるけど、どこの大学を受験するの?」
岬「大した大学じゃないよ。ただ、親元は離れようと思ってね。親とも距離を少し取って生活してみたいなぁってね。」
渡「夢はあるの・・・・・・・・・・・・・・」
岬「自立した女性」
渡「・・・・・・・・・・・・・えっ 自立した女性? どういうこと」
岬「そのまんまだよ。自分で地に足つけて、生きていきたいの。ただそれだけよ」
渡は、それ以上岬に質問をしなかった。渡の岬を見る目が変わった瞬間であった。
数日後の登校時のことである。渡が岬の横に歩いてきた。
渡「岬さん。おはよう」
岬「おはよう。今日も寒いね・・」
渡「俺明日、推薦入試なんだ」
岬「えっ・・・・・・・・・ が、頑張ってね」
岬は一気に現実に戻された感じであった。岬は自分に置き換えて考えていた。
岬「渡君。頑張ってね。頑張ってね」
渡「うん。頑張るよ」
そう言い残し2人は別々の教室へ入っていった。
教室はいつものように騒めいていたが、岬は静かに参考書を見ていた。岬の脳裏には不安と恐怖感が押し寄せていた。
月日は半月ほど過ぎた。更に寒さは増し、吐息が白くなりつつあった。
そうしてついに岬の大学推薦入試を受ける前々日の夜になった。
母「岬、いよいよね。岬大丈夫よ。毎日頑張ったんだもん。お母さんもお父さんもあなたの努力を見てきたから。自身持ちなさい」
受験当日の朝、他県の試験会場まで行くために早起きをした。いつもは声をあまりかけない父親が岬へ声をかけた
父「岬、頑張りなさい。岬はできるから大丈夫。お父さん応援してるからな」と言い、近くの神社のお守りをそっと渡した。
岬は小さな声で「ありがとう」と父親へ伝えた。岬は2日分の着替えと参考書をバックいっぱいに詰め込み、家を後にした。
岬「行ってきます。」
父「行ってらっしゃい」
母「行ってらっしゃい・・・・・・・・・・・・ あなた、あの子たくましくなりましたね」
父「君の子だな。やっぱり・・・・」
母「あなたの子でもあるもの」と言いお互いを見つめた。
続く
by natsu