連続ブログ小説 「光への願い」 第15話

大学の入学式も終わり、授業が開始されていた。岬と渡は会えない時間を埋めるかのように,

メールや電話でお互いの愛を確かめあっていた。

お互いの言葉に心がほぐされていた。

2人の会いたいと思う気持ちは日々高まりあっていた。2人の想いがずっと続くことを2人は疑う余地もなかった。

 

お互いの大学ではサークルや部活に新入生を勧誘するための声掛けが活発となっていた。

岬も渡も何にも所属する気持ちはなかったが、勧誘に負け、岬は元々興味のあった写真部、

渡は映画研究部に入部した。どちらもサークル活動であったが、男性、女性生徒多くの先輩が入部していた。

 

ある日のこと屋外で写真撮影をする練習があった。

先輩1名に、新入生1名がペアとなり、街並みを撮影する練習であった。岬は3年生の高橋 隆司 とのペアであった。

高橋は写真コンテストでも優秀な成績を残している先輩であった。岬は高橋先輩からの写真に関しての

考え方や撮影の仕方を聞いているうちに写真の魅力にどんどんはまっていった。

 

岬が実家を出て20日目の今日。岬の19歳の誕生日である。暖かな陽気となった。

岬と渡は京都駅で待ち合わせをした。20日以上電話越しの声やメールの文字のみでつながっていた。]

お互いの想いはそれ以上につながっていたに違いない。今は・・・・・・

 

京都駅で落ち合った2人は笑顔で抱き合った。

幸せを感じていた。2人とも。いつまでも、いつまでもこの時間が続いてほしいと2人とも願っていた。

 

岬「渡君。浮気していない」

渡「岬、第一声がこれかよ~」

岬「だって、大学はかわいい子やきれいな子が沢山いるでしょ」

渡「まぁねぇ・・・・・・・・・・。 岬こそ」

岬「秘密~」

渡は岬の冗談めいた、いたずらっぽい言葉にも不安を感じるほどであった。その顔の変化に岬は

岬「冗談よ。渡君が大好きよ」

渡の顔がパッと明るくなった。

 

渡「岬、今日まで会いたかったよ。抱きしめたかったよ」

岬「私もだよ。幸せ~」

 

2人のお互いを見つめあう顔が誰よりも幸せに見えるほどであった。

離れている時間がこれほどまでにお互いの気持ちを高ぶらせ、深く、深くお互いを想うことができるようにするのか。

 

昼間はカフェに行き、映画を見て楽しんだ。2人は絶えず手を握り、見つめあいほほ笑みあっていた。

夜には渡が予約したレストランに行って食事をした。

そこで、2人は大学のことやお互いの先生のこと、大学の雰囲気やサークルのこと、

友達ができたことや生活のことなど話は尽きなかった。

 

食事を終えようとすると、遠くからピアノの音色が聞こえてきた。

何事かと思うと岬の周囲にお店のスタッフが集まりローソクに火がともったケーキを持ち、

ハッピーバースデイをみんなで歌っていた。

 

岬は恥ずかしさのあまり、顔を赤らめていた。

最後に渡から花束を岬に渡してお店の中は最高潮に盛り上がり、ほかのお客様も拍手をしていた。

幸せそうな2人での写真撮影をしてもらい店を出た。

写真には本当に幸せそうな2人とそこに一言メッセージが添えられていた。

「あなたと共に」と

 

岬「渡君。今日はありがとう。私幸せだよ」

渡「うん。喜んでもらえて良かった」

 

2人は幸せを感じ、渡のアパートに向かった。初めての渡のアパート。

岬は恐る恐る部屋に入るときれいに整った部屋であった。

岬「渡君、き・・・」

と話しかけた瞬間渡は岬にキスをした。

2人は長い長い時間キスを交わした。そしてきつくきつく抱き合った。

お互いの愛を確かめあうかのように。

 

その夜2人は初めて体を交わらせた。2人とも初めてのことであり、スムーズとはいかなかったが幸せを感じていた。

そして朝方まで話をした。いつの間にか、岬は渡の腕の中で眠ってしまった。渡は岬を抱きしめ共に眠った。

2人の長い、長い1日が終わった。

 

2人が目を覚ましたのは昼過ぎであった。岬は渡の腕の中で目を覚ました。

岬「渡君。ずっと腕枕してくれてたの」

渡「うん。幸せだったよ。岬の寝顔も初めて見たし」

岬は渡の胸の中に顔を隠し、幸せを感じていた。

 

「時間よ止まれ、終わるな今日。」 2人は同じことを考えていた。

しかし無情にも時間は過ぎ、帰る時間になった。渡は岬を京都駅まで送りに行った。

 

駅までの道のりは少しどんよりしていた。また、しばらく離れ離れになることをお互い感じていた。

この世の中にどれほどの人が会いたい人と会えないでいるのか、そう問いかけたくなる気持ちでいっぱいだった。

自分たちだけでないんだといい気かせるものの、やはり寂しさは計り知れないものであった。

 

2人は駅の片隅で抱き合いキスを交わした。

岬「じゃあ、またね」

岬は明らかに目を真っ赤にして泣いていた。

 

渡「岬。岬は一人じゃないよ。僕はいつも岬を想ってるよ」

岬「うん」

 

岬は無理矢理に笑顔をつくり、さよならを言い、奈良に帰って行った。

ただただ寂しさだけが残った。岬と過ごしたベット。岬の香りが残っていた。渡はひとしきり泣いた。

 

それから岬と渡は1カ月に1回会う約束をして会っていた。

時が過ぎ、大学1年の夏休みのことであった。

 

続く

By natsu