岬は店をあとにした。岬は人波をぬうように歩道を歩いていた。しかし頭の中で何かが渦巻いていた。
それは岬にとって興奮するものであるのは自分自身でも理解していた。
しかし、具体的なことがまだ分かっていなかった。
この興奮は奇跡的な出会いであった。本来なら何も気にせず歩いて通り過ぎてしまうお店。
そのお店の中の会話も分からない中で、自分自身の心を揺すぶらせるまでの何かを感じ取ることができたのだから。
岬はハッとした。もしかして自分がやりたくなった仕事。
「ウェディングプランナー」
岬は家に到着するといてもたってもいられなくなり、携帯電話で「ウェディングプランナー」と検索をした。
調べれば調べるほど素敵な仕事だと分かった。
一生に一度の結婚式に向けて全力で支援をしていく仕事である。
一組のカップルに対して約半年から1年かけて準備をしていく。その中でお互いの信頼関係を築き、色々な提案をしていく。
そして、様々な準備を抜かりなく行い、式の当日を最高のものにしていく仕事。
おもてなしの心、サービスの心、自立した人間性が必要と感じた。
岬は決心した。強く強く心に想った。
岬「私、ウェディングプランナーになる」と声に出して言った。
そうして手帳にも「ウェディングプランナーになる」と書いた。
岬はウェディングプランナーになるために何を勉強すべきかを調べ書きだした。
結婚式のタイプ、宗教上の問題、課題、司会・進行、食事、テーブル装飾、式の流れ、
席次、挨拶、両家の役割、引き出物、衣装、ブーケ、ケーキ、化粧、お色直し、前撮り、両家ご挨拶、宿泊場所。
調べれば調べるほどたくさんできてきた。
岬は実際に結婚式は出たことはなかった。ユーチューブを見てイメージをした。何度も何度も動画を見た。
きちんとした教科書はなかなかなかった。
ただ一つ言えることは、人を幸せにしたいか、誰よりも幸せな1日を演出してあげたいという気持ちがあるか。
岬はまた、手帳にそう書き残した。
岬はイメージしたのだ。自分だったらどのような結婚式にしたいのか。
そして、岬は12月半ばの夜、母へ電話をした。
岬「お母さん。私やりたい仕事見つけたよ」
母「なぁに」
母は優しい声で岬に聞いた。岬が言いやすいようにという母の配慮であった。正直母も緊張していた。
岬「ウェディングプランナー」
母「素敵な仕事じゃないの」
岬「お母さん。反対しないの」
母「何、言ってるのよ。岬が一所懸命悩んで、考えて決めたんでしょ。どんな理由でさえ、お母さんは応援するわ」
岬「お母さん。ありがとう。お父さん反対しないかな?」
母「じゃあ、自分で伝えてみたら」
岬「えっ」
そういう間に母が父を呼んでいる声が受話器から聞こえてきた。
父「岬か」
岬「うん」
父「岬、どうしたんだ。ないかあったのか」
岬「お父さん。私ウェディングプランナーになろうと思うの」
岬は恐る恐る父へ伝えた。次の瞬間父親が
父「岬がやりたいことなのか」
岬「うん。やってみたい」
父「じゃあ。頑張りなさい」
岬「私、頑張るよ」
電話の横には母も立ち、父親と岬の会話を聞いていた。母はまた、泣いていた。今日は嬉し泣きだった。
電話を切り、岬はほっとしたと同時に泣けてきた。
久しぶりに両親の声を聞いたら安心したのだ。
同時に岬のメールの着信音が部屋の中を響いた
剛からだった。
岬へ
この前の涙が気になって
岬は剛へ返信した。
大丈夫。私は前に進んでいます。
剛君ありがとう。
「 きみ嫁(ゆ)けり 遠き一つ の訃(ふ)に似たり 」
俳句を1句つけて
続く
By natsu