神社への道のりはそうは遠くなかった。お互いが知っている神社でもありスムーズに神社へたどり着いた。
2人はおもむろにお賽銭を取り出し、息の合った感じでお参りをした。
渡がお参りを終わり横を見ると岬はまだお参りをしていた。
岬は必死に目を閉じ、真剣にお願い事をしている印象が渡にはかわいく見えた。
しばらくすると岬もお参りを終えた。
2人は境内の中をゆっくりと歩いていた。
渡「岬さん。何をそんなにお願いしていたの?」
岬「秘密です。言っちゃダメなんです・・」と言いにっこり微笑み返した。
渡は先ほど感じたことを岬へ伝えた。
渡「岬さんのお参りの仕方かわいい」
岬「えっ・・・・・」
渡「一生懸命というか、必死というか」
岬「当たり前でしょ。大事なことをお願いしているんだから。必死よ」
渡「そっかぁ・・・・・」
岬「渡君は神とか信じないの?」
渡「信じないわけではないけど。良くわからない。目に見えないし、お願いが絶対叶うわけでもないし」
岬「夢がないんだから。もう・・・・・・・・・・」
渡「岬さん、なんで今日ここへ来たの」
岬「それは・・・・・・・・・・」
岬は言うべきことが言えずにいた。
渡が話しをしようとしたら、それを横切るかのように岬が言葉を発した。
岬「いいよ」
渡「えっ 何がいいの?」
岬「渡君がこの前私に言ったこと」
渡「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
2人の中に一気に熱く感じるものが渦巻いた。渡は何を言われたのか理解するまでに時間がかかった。
岬の顔も真っ赤になり、下を向いてもじもじしていた。
渡「いいの、本当に?」
岬「いいよ」
渡「やった~」
と大きな声で渡は叫んだ。それを見た岬も、にっこりとほほ笑み渡を見ていた。
渡は周囲のことなどお構いなしに、体いっぱいを使い喜びを現わしていた。
渡がひとしきり喜んだ後に、岬は話を切り出した。
岬「渡君。私合格したの。奈良の大学合格したの」
渡「岬さん。おめでとう。良かった」
岬「渡君の合格発表明日でしょ」
渡「うん、そうだよ」
岬「だから、私今日精一杯お願いしたの。神様にお願いしたの。だから大丈夫だよ」
渡「岬さんはさっき僕のことをお願いしてくれたの。ありがとう。僕は恥ずかしい。自分のことお願いしてた」
岬「渡君。それが普通よ。だって明日なんだもん」
渡「岬さん。本当ありがとう」
岬「うん」
2人はお互いの意思を確認しあった。2人が更に仲を深めていくのに時間はかからなかった。
翌日、渡の受験した大学の合格発表だった。渡の番号は「19925」番
渡はインターネットを通じ合格者の番号を見ていった。
19919、19921、19924 「 19925 」 19929 19932 19938
渡は「19925 あった~」と大きな声で叫んだ。家中の静けさが一気に吹き飛んだ瞬間だった。
そして渡はすぐに岬の元へ無意識に向かっていた。
岬とは近くの公園で待ち合わせをしていた。
岬の目に遠くから渡が走ってくるのが見えた。はぁはぁと息を切らせながら岬の元へたどり着いた。
ピーンと空気が張りつめ、お互いが見つめあい、渡が岬に
渡「あったよ。あったんだぁ」と興奮気味に伝えた。岬はにっこり微笑み
岬「おめでとう。渡君。頑張ったもんね」
と言い渡の手をそっと握った。2人が2回目の肌を触れ合う瞬間だった。
2人の手は、お互いが寒い12月にも関わらず温かった。
そして、おもむろに渡が岬を抱き寄せ「ありがとう」と耳元で呟いた。
岬も渡の体をぎゅっと引き寄せ、お互いがお互いのぬくもりを感じることができた瞬間でもあった。
2人の間にこれ以上の言葉は必要なかった。
抱きしめあった体が離れると、自然に手をつなぎ、2人は歩き始めた。
夕日に移る2人の陰が時折重なり合い、そして1本の線のように映った。
続く
By natsu