連続ブログ小説 「光への願い」 第11話

神社への道のりはそうは遠くなかった。お互いが知っている神社でもありスムーズに神社へたどり着いた。

2人はおもむろにお賽銭を取り出し、息の合った感じでお参りをした。

渡がお参りを終わり横を見ると岬はまだお参りをしていた。

 

岬は必死に目を閉じ、真剣にお願い事をしている印象が渡にはかわいく見えた。

しばらくすると岬もお参りを終えた。

 

2人は境内の中をゆっくりと歩いていた。

渡「岬さん。何をそんなにお願いしていたの?」

岬「秘密です。言っちゃダメなんです・・」と言いにっこり微笑み返した。

 

渡は先ほど感じたことを岬へ伝えた。

渡「岬さんのお参りの仕方かわいい」

岬「えっ・・・・・」

渡「一生懸命というか、必死というか」

岬「当たり前でしょ。大事なことをお願いしているんだから。必死よ」

渡「そっかぁ・・・・・」

岬「渡君は神とか信じないの?」

渡「信じないわけではないけど。良くわからない。目に見えないし、お願いが絶対叶うわけでもないし」

岬「夢がないんだから。もう・・・・・・・・・・」

渡「岬さん、なんで今日ここへ来たの」

岬「それは・・・・・・・・・・」

 

岬は言うべきことが言えずにいた。

渡が話しをしようとしたら、それを横切るかのように岬が言葉を発した。

岬「いいよ」

渡「えっ 何がいいの?」

岬「渡君がこの前私に言ったこと」

渡「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

2人の中に一気に熱く感じるものが渦巻いた。渡は何を言われたのか理解するまでに時間がかかった。

岬の顔も真っ赤になり、下を向いてもじもじしていた。

 

渡「いいの、本当に?」

岬「いいよ」

渡「やった~」

と大きな声で渡は叫んだ。それを見た岬も、にっこりとほほ笑み渡を見ていた。

渡は周囲のことなどお構いなしに、体いっぱいを使い喜びを現わしていた。

 

渡がひとしきり喜んだ後に、岬は話を切り出した。

岬「渡君。私合格したの。奈良の大学合格したの」

渡「岬さん。おめでとう。良かった」

岬「渡君の合格発表明日でしょ」

渡「うん、そうだよ」

岬「だから、私今日精一杯お願いしたの。神様にお願いしたの。だから大丈夫だよ」

渡「岬さんはさっき僕のことをお願いしてくれたの。ありがとう。僕は恥ずかしい。自分のことお願いしてた」

岬「渡君。それが普通よ。だって明日なんだもん」

渡「岬さん。本当ありがとう」

岬「うん」

 

2人はお互いの意思を確認しあった。2人が更に仲を深めていくのに時間はかからなかった。

 

翌日、渡の受験した大学の合格発表だった。渡の番号は「19925」番

渡はインターネットを通じ合格者の番号を見ていった。

19919、19921、19924 「 19925 」 19929 19932 19938

渡は「19925 あった~」と大きな声で叫んだ。家中の静けさが一気に吹き飛んだ瞬間だった。

そして渡はすぐに岬の元へ無意識に向かっていた。

 

岬とは近くの公園で待ち合わせをしていた。

岬の目に遠くから渡が走ってくるのが見えた。はぁはぁと息を切らせながら岬の元へたどり着いた。

 

ピーンと空気が張りつめ、お互いが見つめあい、渡が岬に

渡「あったよ。あったんだぁ」と興奮気味に伝えた。岬はにっこり微笑み

岬「おめでとう。渡君。頑張ったもんね」

 

と言い渡の手をそっと握った。2人が2回目の肌を触れ合う瞬間だった。

2人の手は、お互いが寒い12月にも関わらず温かった。

 

そして、おもむろに渡が岬を抱き寄せ「ありがとう」と耳元で呟いた。

岬も渡の体をぎゅっと引き寄せ、お互いがお互いのぬくもりを感じることができた瞬間でもあった。

2人の間にこれ以上の言葉は必要なかった。

 

抱きしめあった体が離れると、自然に手をつなぎ、2人は歩き始めた。

夕日に移る2人の陰が時折重なり合い、そして1本の線のように映った。

 

続く

By natsu