今日は12月最後の日。大晦日。岬と渡はお互いの家で年越しを迎えようとしていた。テレビでは年越しのカウントダウンが始まった。
5.4.3.2.1 「新年おめでとうございます」と新年の挨拶がテレビの向こうから聞こえてきて初詣の映像がテレビから流れていた。
岬も渡もお互いの家で携帯電話を手にメールを打っていた。年を越えてほどなくするとお互いのメールを知らせる着信音が響いた。
お互いがメールを見てにっこり微笑んでいた。2人にとって時間が止まって2人だけのための時間かのような気持ちをお互いが感じていた
岬・心内「幸せだなぁ。ずっと続きますように」
渡・心内「時が止まればいいのに」
2人の心が1本の見えない糸でつながっていた。その糸は2人には十分すぎるほど見えており、お互いを包み込むものであった。
季節は2月になった。寒い寒い日が続いていた。
岬も渡も学校へ行く最終日であった。
2人はいつものように校門で待ち合わせをして、少し離れると手をつないで歩いた。
岬「渡君。今日で学校終わりだね。あとは卒業式だね」
渡「うん・・・・・・・・・・・・・・・」
渡の元気ない表情と返事に岬は気付いた。
岬「渡君。どうしたの?」
渡「岬さんとこうして歩いて帰るのも今日が最後なんだって思うと寂しくて」
岬「私も同じだよ。でもずっと一緒でしょ」
渡「うん」
岬「元気出してよ。私まで悲しくなるじゃないの」
渡「ごめんね。ただただ岬さんが愛おしいんだ。大切なんだ。だから、離れるのが寂しいし、怖いんだ」
岬「大学は別々だけど、近いじゃないの1,2時間あれば会えるじゃないの」
渡「時が止まればいいのにって思う。2人の時間だけでもいいから」
岬「面白いこと言うのね」
渡「君が大好きなんだ。君のすべてを僕の目に焼き付けたい」
岬「えっ・・・・・」
渡「もう君が好きなんだ、好きなんだ」
岬「渡君。ありがとう」
2人はそう言い抱き合った。
岬「私も渡君と離れるの寂しい」そういい、岬は大粒の涙を流した。渡はゆっくりと岬の髪を頭をやさしく撫で、やさしくキスをした。
渡「僕も離れたくない。放したくない。2人で生きていきたい」
時は無情にも3月10日、卒業式の日を迎えた。
2人を引き裂くかのように時間が経過した。周囲は浮き足だった感じで高校最後の写真を撮ったり、卒業写真にコメントを書いたりと楽しそうなのに、
2人はそれぞれの教室で遠い向こうの空を眺め、ため息をついた。
卒業式日の夜、2人はそれぞれのベットの中で泣いた。ひとしきり泣いた。目を真っ赤にして。こんなに泣けるのかというくらいに。
遂にこの日が来た。渡が京都の大学に行くため引っ越す日。
最初から2人はわかっていた。離れ離れになることを。でも2人は付き合いを始めた。辛い今日のこの日。
岬は渡に渡す手紙を手に持ち家を出た。
待ち合わせの駅で目を真っ赤にして渡に手紙を渡した。多くの言葉が出てこなかった。
岬「渡君。ありがとう。あなたがいてくれたから図書館でも勉強ができた。やる気が出たの。今まで言えなかったけど。
私もあなたのことが好きでした。あなたを初めて見た時からあなたのこと気になって。あなたに会えるかもしれないって図書館にいっていました」
渡「ありがとう。手紙、ありがとう」
2人はお互いの体を引き寄せ抱き合った。
岬「ずっと一緒だよ」
渡「一緒だよ」
そう言い2人はお互いの体から離れた。改札口まで岬は顔を上げることができなかった。
渡「じゃあ、行くね」
と岬に声をかけると泣きじゃくった岬が顔を上げた。
渡が改札口を通り姿が見えなくなるまで岬は立ち尽くしていた。
岬・内心「渡君、がんばれ。ずっとあなたのことが好きでした」
渡は電車に乗り岬の手紙を取り出した。
手紙の中に小さな何かが入っているのに気付いた。
続く
By natsu