11月のある日曜日。岬と剛はカメラをお互いが持参し街へ繰り出した。風が吹くと底冷えするような日で、
寒さが孤独さを強くするような日であったが、岬は剛との外出で心がポカポカするような気持であった。
岬「今日は何を題材に撮影する」
岬と剛は最近2人で題材を決め写真撮影するのが趣味になっていた。
剛「今日は冬メイクでどう?」
岬「難しいけど。いいよ」
2人は競うように写真を撮影していた。
そしていつものように撮影が終わると、剛のマンションに行き、パソコンに写真を張り、お互いの写真を評価しあうことでお互いの趣味を楽しんでいた。
岬「今日はどうだった?」
岬の心は良い評価をもらえることも期待しているような表情であった。
剛「岬さ、この写真なんだけど」 と言わんばかりのところで、岬が剛にキスをした。
剛もそれ以上のコメントは控え、キスを続けた。
時間が経過し、2人がベットの上で横になってると、ふと、
剛「岬、どうしてさっきあの写真の時にキスをしてきたの」
岬「・・・・・・・・・・・・」
岬の中に何か戸惑いが見られ、剛はその心の変化を感じ取ったのである。
剛「何か特別なものでもあるの。あの写真。しかもカップルだったね」
実は写真に写っていたのは以前付き合っていた渡と春香であった。
2人が腕を組んで楽しそうに歩いている写真だった。
剛「どうした?」
岬「なんでもないの」 と言いながら岬は泣いていた。
岬の中にまだ渡の残像が残っていたのは確かだった。そして、初恋の相手の渡のことが今でも気になり、
相手の女性に対して嫉妬している自分が情けなくなったとともに、横にいる剛に対しても申し訳なさでいっぱいであった。
剛「いいよ。何も言わなくても」
岬「・・・・・・・・・うん」
剛「ただ、少し写真が寂しそうだったから、岬らしくなかったから」
岬は剛の上での中で少し泣いて眠った。
剛のパソコンには2人の写真が写されたままで画像が止まっており、そのパソコンの明かりだけが部屋を薄暗く照らしていた。
季節は12月に移ったある日、岬はあるお店の前で足を止めた。
それはウェディングドレスがきれいに飾ってあるお店であった。
中をよく見ると、カップルと思わしき人とお店の方が何やら打ち合わせをしているようであった。
岬はそこで衝撃を受けたのは、そのカップルがとてもにこやかで幸せそうであったこと。
しかしそれ以上のお店のスタッフがとても穏やかに、にこやかに話をされている様子が伺い知れた。
話をする人によって、相手の表情はこんなにも変わるものなんだと。
何度も何度もスタッフは頷き、そのカップルの話を聞いているかのようであった。
そして、しばらく外で眺めていると。岬に気づいたそのスタッフが岬にも満面の笑みで軽く会釈をしてきた。
岬は無意識に会釈をしたが表情は硬かった。それは緊張してしまったからである。
岬はお客様をもてなすということの、一場面を見て感動を覚えたのは間違いなかった。
後々の岬の仕事への取り組みにもつながるとは、この時は思いもしなかったのである。
続く
By natsu